4月下旬。各地でノッコミの便りが聞こえる。
今年は、昨年に比べ水温上昇が遅く、釣果も昨年に比べて芳しくないようだ。
こんな年に限って、春の釣りを再開したのも、何かの因果だろうか。

そうはいうものの、相差では、他所を尻目に大いに釣れているようである。
ここのイカダをHGとするチヌァー氏(HP・The筏ちぬ)が、昨年12月に60オーバを釣り上げてから、ますます盛況の感さえある。
閑人氏(HP・やってみようよオートキャンプ)もまた、ここで最近年なしを釣り上げていた。
やはり、ノッコミは、イカダに分があるのだろうか。

イカダでなくとも、相差であれば、魚影は濃いはずである。
かねてから、照準を合わせていた池尻なら、ひょっとして多くの年なしに巡り会えるかも知れない。

池尻。
相差海釣りセンターイカダから、すぐ斜め沖に突き出たテトラ帯である。
ここは、7年前に訪れた時、テトラの中にチヌが見えていた。
その時は釣れなかったのであるが、魚影の濃さは、情報と、この体験により確信できた。

そこで、月末の休日、いよいよ満を持して出かけたのである。

池尻に着いたら、何と立札がある。
「これより先、禁漁区につき立入禁止、危険区域」とある。

池尻漁港
沖テトラ帯
3,500円で買った伊勢エビ


せっかく来たのにこれではどうしようもない。
そこで、界隈を歩いていた地元の人を呼び止め、聞いてみた。

「すみません、立て札がありますけど、釣りは駄目なんですか。」
「ああ、沖のテトラより、向こうは波が荒いでなあ。いかんに。」
「テトラよりこちらならいいんですか。」
「ああ、ええにええに。」
「ありがとうございます。」

いつもながら、地元の人の愛想のよさは快い。

大潮だったので、難なくボートが出せ、テトラまで漕ぎ出した。
魚探の水深計を見ているとひどく浅く、かなり岸から離れても、2mぐらいしかない。

相差海釣りセンターの沖イカダに、沢山の人が乗っているのが見える。もともと、ここの情報からこの池尻に来たのだ。
沖イカダとテトラの間にビン玉が見える。
あのビン玉にボートを掛けたら、おそらくまちがいあるまい。

しかし、料金を払って、イカダに乗っている人の、あまり離れていない
隣で釣るというのは、なんだかいやらしい気がする。それに、あのビン玉に掛けていいかどうかも分からない。

そこで、沖テトラの前にアンカーを打ち、釣り始めた。
ここまで来ると水深は6mあり、何とか釣りになりそうだ。
このテトラより沖は、相当の波で、地元の人が言ったとおり確かに危険だ。

魚探のフイッシュアラームは鳴り続けている。魚影は濃いようだ。
しかし、流れが速く、ダンゴがなじまない。

しばらくしたらフグが釣れた。その後キュウセンと続く。
だが、あまりに流れが速すぎてアタリが読めない。
ダンゴを多く用意してきていなかったので、3時間ほどでなくなってしまった。

もともと、試し釣りに来たようなものだから、これで帰ることにした。

岸に着いたら、老漁師が舟の修理をしていた。
彼の舟の傍に車を置かせてもらっていたので、お礼がてら、挨拶をする。

「どうやな、釣れたかな。」
「いやあ、あきませんでしたわ。」
「そりゃ、残念やったなあ。」
「魚はおるみたいなんですけどね。あの、イカダの傍にビン玉がありますやろ。」
「ああ、ありゃワカメの養殖のビン玉やがな。あれに舟掛けて釣ったらよかったのに。」
「ええー、そんなことして怒られへんですか。」
「ははは、相差のもんはそんな細かいこと誰も言わへんがな。あれにチヌはついとるでなあ。」
「そうかな。今度はあっこに行こかいなあ。」
「そのうち、取っ払うけどな。もうワカメの養殖は終わったから。」

残念であった。ボートを出すときにこの人と出会っていれば、今日は釣れていたかも知れない。
こんなふうにして、地元の人と会話するのも、釣行のたびの楽しみのひとつだ。

今度来るときは、もうビン玉はなくなっているだろう。それに何も吊ってないビン玉は魚の寄りがよくない。

古老に別れを告げ、帰路に着く。ここにはもう来ないかも知れない。

途中、安かったので、伊勢エビを買った。写真のと、小さいのを6尾2,000円で買った。
家族は喜んでいた。これは、釣りに行くことの正当化である。

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釣行記3に続く
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