ネット仲間で閑人氏という人がいる。「やってみようよ、オートキャンプ」というHPを運営しており、筏釣りから紀州釣り、落とし込みまでこなす強者である。
その彼が、私の釣果を掲示板等で知り、是非奈屋浦でボート掛かり釣りをしたいと伝えてきた。
しかも、彼はゴムボートをすでに手に入れ、改造までしているというのである。
これは、ただごとではない。
ボートでチヌ掛かり釣りをする人は私は他に知らないし、もともと仲間が欲しいと思っていた。仲間がいれば、開拓も一人でしなくていいし、情報を交換すれば、より多くのチヌと出会える可能性が増すだろう。
そんなわけで、二つ返事で承諾した。

台船前の閑人氏(手前)と佐渡氏(奥)
この日の私の釣果
8/26閑人氏のリベンジとボー艘


閑人氏と初めて会ったのは8月23日の事であった。
いったいネット上で始終情報交換していると、初対面でもそんな気がしないものである。昨年秋、同じような形で紀釣会氏との邂逅があったが、話しをしていても、なぜか以前からの友人のような感じがした。

真っ黒に日焼けした閑人氏との出会いも、この例にもれなかった。

彼は初めてのボート釣りにたいして相当意気込んでいた。自ら改造したというシッティング・バーや底板を見て、気合いは充分すぎるぐらい感じられた。
そんな彼と、中の浜へ繰り出し、さあ、出船しようというときのことである。

彼が意気揚々と車からゴムポートを出し、空気を入れようとした時、
「オールを忘れて来ちゃった。」という声を聞いたのは。

私は唖然とした。しかし、もっと唖然としていたのは彼の方であったろう。
オールのないボートは洒落にならない。
私は彼のボートを引っ張っていってやろうと言ったが、彼は遠慮した。いざというとき、オールがなければ海上で動きがとれない。初めてのボートで、オールのない無謀は止すべきであるし、何よりも安全を期しての判断であったろう。

内心行きたくて仕方がなかったのであろうが、彼は護岸の台船前で紀州釣りをすることにした。
ここは、台船の下に大型が多数潜み、昨秋も佐渡氏が47cmを上げている。
終日釣るとしても遜色のないポイントなのである。

私は一人で後ろ髪を引かれる思いで、あらら浜と中の浜の間のポイントへ。本来ここは彼に譲るつもりであったが、今回は仕方がない。

ボートから眺めると、いつの間にやら佐渡氏が現れ、閑人氏の近くで釣っているようである。ボートからは一文字堤が邪魔をして彼の姿は見えない。
閑人氏のことは佐渡氏に伝えてあったので、彼らは会話しているかもしれない。

そんなことを考えながら、私は45cm頭に4枚のチヌを釣り上げ、ポイントをあとにした。

岸に着いたら、二人とも釣っていなかった。
閑人氏はあまり元気がなかった。愛知県からわざわざ来て、念願のボートを出せなかったのであるから、さぞかし無念であったろう。
次回に必ずリベンジを果たすことと、ボー艘族の旗揚げを約束して別れた。

しかし、今回の思いも寄らなかった閑人氏の失敗は、次回の彼の満面の笑みの布石であったのだ。

「ボー艘族」と言っても読者の知っているその言葉の響きのように、海上をボートで何台も連ねて爆走することではない。そんなことは手漕ぎボートでは不可能だし、意味がないし、真珠業者の迷惑になる。
それどころか、2台以上のボー艘を禁止するものである。

やはり、3台以上のボートが同じ海域に存在したら、真珠業者も目障りであろう。
それだけの理由であるが、業者が近くに来たら、友好的に挨拶をすることと共に、重要な事である。
「ボー艘族」は各人が勝手に好きな時間に出かけていって、おのおの適当な時間にあがるのである。
別につるんで一緒に行くわけではない。


8月26日、私が中の浜に着くと、閑人氏は、すでにボートを浮かべて海上にあった。
彼のリベンジとボー艘特攻は意外に早くやってきたのである。


釣行記9に続く
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