奈屋浦

次の休日、奈屋浦へ中北氏と出かけた。

辻岡氏に以前から、お願いしてあったのである。
今回はチヌを狙っての釣行である。メバルやガシはどうでも良い。
新釣行記 1参照)

釣り場は、昨年8月下旬、50センチと55センチを仕留めた例の円形イカダだ。

7時に集合し、辻岡氏に渡してもらった。

様子が以前と変わっている。
イカダの数が減っており、アジの養殖もしていないし、当然エサもやっていない。

養殖エサを撒いていると、そこにボラが寄るので、辻岡氏は私たちと一緒にボラ釣りをするのであるが、今回はどうするのだろう。

そんなふうに思っていると、私たちを昨年のイカダに降ろすと、彼は船でどこかへ行ってしまった。

目の前は海上釣り堀でハマチが釣れ盛っている。

私たちはそれを上目遣いに見ながら、釣り始めた。
キスのエサ取りがいる。しかも、大きい。ヒジタタキである。中北氏は喜んでクーラーに入れている。私はどうでも良い。

フグにハリをとられるようになる。仕掛けを上げるとハリがない。
ボラは寄らない。やはり、養殖餌の関係か。
良くない傾向だ。今回は駄目もしれない。
昨年釣れたのは、この養殖餌をやっていたからかも知れないから。

そのうち、エサもとられなくなる。エサ取りもいなくなったのか。
「じり貧だね。」と言い合う。

だが待てよ。こんな時はチヌが寄ってきているから、エサ取りどもはこわがって退散しているのだ。
そう思い返して、根気よく打ち返しを続けた。

10時半ごろ、ダンゴ崩壊後久しぶりに前アタリが出たと思ったら、ウキがゆっくりと沈んでいく。

一呼吸おいてから、合わせた。

たいした手応えではない。
「3年生だよ。」と、中北氏に声を掛ける。

ところが、中層まで上がってきたら、やたら重厚な引きをくりかえす。竿は満月に引き絞られている。やはり大きい。
姿が見えた。きれいなチヌだ。中北氏タモ入れ、一発。エサはアケミのむき身。

普通のイカダだったら、ここでもう安心するはずだが、ここはそうは行かない。何せ、足場が極端に悪く、スカリに入れるまで、一苦労である。
中北氏が写真を撮ってくれる。しかし、獲物はタモに入ったままだ。

暴れさせないように、タオルで目を覆い、はらはらしながら、やっとの事でスカリに納めた。

「50は超えていますね。しかし、やはりチヌはきれいですね。」
と、中北氏は感激しながらも、目の色が変わってギラギラしている。

だが、私は50に少し足りないように思う。なんとなく、スカリの中が気がかりだ。

フグが釣れる。でかい。なんと大きいフグだ。マスが釣れる。やっとボラも寄ってきた。

昼に、掛け竿に目盛りをつけてあったので、先ほどのチヌをはかってみると、やはり50センチを少し切れている。
これじゃ駄目だ。魚拓にできないじゃないか。私たちは魚拓に出来るのは50センチ以上と決めていたから。

もっと大きいのを釣らなければと、またしても真剣になり、打ち返しを繰り返す。
1時半、アケミ貝のむき身に冷凍ミノムシを抱き合わせて刺した。昨年もこのエサで釣っている。特に意味はないが、目先を変えるためと、エサの存在を海底でよりアピールするためだ。

するとダンゴが着底しても割れず、おかしいと思っていたら、そのままウキを引きずり込んでいく。合わせる以外にない。

先ほどと同じくらいの引き、しかし、中層に達してからの締め込みはさらにすばらしく、逸走また逸走を繰り返す。
姿を見てから驚愕した。先ほどのものよりも、一回り以上大きい!

魚体の表面はくすみ、明らかに老成魚の様相を呈している。尻ビレ近くには血が滲んでおり、目はぎょろりとうらめしそうにこちらを見ている。

突然私は竿を海中に突っ込み、こいつの引きに対応した。イカダの下へ潜り込もうとするからだ。イカダにはブイが付いており、それに付着したフジツボに道糸が擦れたら、一巻の終わりである。

ついに浮いた。中北氏タモ入れは3回目で成功。
こいつは自己最長寸となった。57センチ。

さらに2時半、今度は容易に上がってこない。底を切らすことが出来ない。何度も底で首を振っているが、リールを巻けないのである。
しばらくすると2号ハリスが飛ばされてしまった。

あれはいったい何だったんだろう。
60センチ級に夢を膨らませ、3時に納竿した。

辻岡氏は何をしているのかと思っていたら、少し沖で48センチのまるまると太ったマダイを、手釣りで2枚も仕留めていた。


新釣行記 8に続く

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