上條裏
7月初旬の夜、かねてからの釣り場、上條裏を訪れた。
私は釣りに行くときは必ずといっていいほど、一度その場所へ行き様子を見に行くことにしている。いきなり行くより、連れ具合、周囲の様子、ポイントの状況などが探れるからである。
釣り人が一人いて、もう帰るのだという。釣れましたかと聞いたら、彼はクーラの中を見せてくれた。
懐中電灯で照らしたそこには、60センチはゆうに超えているマダカ(セイゴの成長したもの。ハネ、フッコのこと)が折れ曲がって3本入っていた。
彼は、
「こんなものは所詮外道だ。つい最近ここで56センチのチヌを釣ったばかりだ。今日は駄目だった。」
と豪語し、車に乗り込んでいった。
いったい、こんな河口にそんなでかいチヌがいるのだろうか。もっとも
ここは往年の釣り場で二十年以上も前から良型が出ることで有名なのだが、実際釣るのを見たことがないので半信半疑だった。
ここは私の家から非常に近く、車で2分もすれば着いてしまうので、次の夜また出かけた。
昨夜の釣り人の竿が大きく曲がっている。彼のタモですくい上げたのは46センチの見事な良型であった。
やはり、こんな河口にも大チヌはいるのだ。
今までダンゴを調合し、遠くまで出かけていってチヌを追いかけていた
ことが、ばからしいように思えた。
ダンゴもなしに、電気ウキの仕掛けにミノムシをつけて、放り込むだけでこんなチヌが釣れるのである。しかも、異常に近いところで。
次の日、今度は釣行してみたが、私には二歳魚しか釣れなかった。しかも数が少ない。
数ではどう考えても大湊西の川の方に軍配が上がった。しかし、あそこではこんな型はとうてい望めない。
やはり、良型を狙うなら、数は辛抱するべきであろう。ここは、二、三歳魚に混じってごくたまに大型が混じるので、長い間ホットな地位を保ち続けているのだと思っている。
新釣行記 6に続く
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