闇夜に或いは月夜に


6月に入り、大湊のシラは本格化しつつあった。始めは二桁にわずか届かない釣果であったが、下旬にさしかかる頃には半夜で27枚釣れる日もあった。

釣り方のコツは餌を常に底すれすれに流すことであった。大潮の時などは潮は飛ぶように流れ、魚が食いつく前に餌が流れてしまうような感さえある。流れは速すぎてもゆっくり過ぎてもよくなかった。ほどほどの流れが彼らにとって餌を食いやすい状況にあるように思われた。

流れがあるのでオモリは1.5号を使った。最初の頃は青ノリによく根がかりしたが、下旬になるとそんなこともなくなった。根かがりだと思うとアタリであったり、逆のこともあった。青ノリといえば釣り上げたシラはこれを腹一杯に飽食していた。そのせいか、独特のこの魚自体の臭気が弱められていたように思う。

不思議なことにこの場所は夜でもフグが釣れた。あと外道といえばセイゴぐらいで、時には50センチに迫るものも顔を見せたりしていた。しかし、それらの外道を釣っているのは他の人で、私には何故かフグもセイゴもあまり釣れず、ほとんどがシラであった。

闇夜の晩は月夜よりも食いが立つように思われた。のみならず、太陽の出ている間は全く食わず、日没と同時に釣れだすのを常としていた。

この魚は本来夜行性なのだと認識を新たにした。ダンゴを使う紀州釣りは、真昼の釣りを可能にしたが、ここでは流れが速すぎて意味をなさない。昨年は昼にカイヅが釣れたので、同僚の湯川氏などは昼間は無理なのかとよく言うが、シラとなるとそうはいかないようだった。

何にしてもよく食うのである。アタリの出ていないときは、ほとんどないと言ってよかった。もちろん空振りもあるし、バラシもある。しかし、サソイを多用することで、多くをハリに乗せることが出来たように思う。アタリが出たら、少しウキを寝かしたり、引っ張ったりして変化をつけると、彼らは面白いように引き込んでいった。

そんなわけで、一か月の間に150枚以上釣ってしまった。週に3回ぐらいの釣行ペースでである。しかし、どうしてもサイズは小さく、最大で23センチといったところであった。


新釣行記 4に続く

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