御座堤防の特徴

御座堤防で食うチヌは中大型ばかりではなく、小型も混じっていた。中北氏は28cmから32cmまでのものをよくあげていた。しかし、私には小型は釣れず、36cm以上のものばかりであった。

中北氏は口にはださないが、かなり不満らしく、いつもため息をついていた。佐渡氏には釣れても、ボラばかりで、とうとう彼は半ば拗ね気味に「ボラキング」を名乗ってしまった。
2人とも、2年前に同じ場所であんないい思いをしているんだから、私にだってその権利はあるのだ。

ただ、問題は黄昏時にしか食わないということと、釣れても1枚のことが多く、おまけにそいつはいつも腹一杯に撒き餌を食っていた。

私は釣れたチヌが撒き餌を飽食しているときは、自らの腕を未熟だと感じる。数釣りの時、最初のやつは撒き餌を食っていず、後から釣ったものが食っているのは納得できる。しかし、早くから竿下に来ているのに食わせることが出来ず、夕方の地合にしか仕留められないというのは、まだまだだということではないか。

私は竿下に来たチヌは、すぐ釣ってしまわなければ我慢できない。
うるさいぐらいのエサ取りどもの食いが、はたと止まり、刺し餌が残ることが数回ある。
チヌが、寄ってきているのだ。このときに撒き餌を食いに来ている。だが、刺し餌まで食わない。
海底の様子を頭に思い浮かべ、ハリスを細くしたり、長くしたり、誘いをかけてみたりしたが、結果は同じであった。
その時がチャンスなのだが、御座ではほんの一瞬で、すぐまたエサ取り共の饗宴が再開されるのである。

46cmのグレ

黄昏時にしか食わないのなら、いっそのこと、遅く出かけて夜釣りに突入してやれと、電気ウキを携えて出かけた。

10月1日、日曜日である。
3時前に着いたら、何と6人もの釣り人が堤防に並んでいる。マイナースポットなのにと、閉口したが、よく見るとチヌ釣りをしている人は2人しかいない。
ままよと思って堤防に入っていくと、そのうちの2人は帰るところで、こちらに向かって歩いてきた。これで4人なった。
さらに先端付近に歩いていくと、亀山から来たという老夫婦が帰り支度をしている。遠方なので、これで終わりにする、ここで釣ったらどうかと、場所を空けてくれる。そこは、私のいつものポイントであった。
これで残っているのは2人しかいない。

その2人は若い夫婦であった。奥さんは適当な竿でウキ釣りをし、旦那の方はウキを使わず、ぶっこみでダンゴ釣りをしていた。2人ともかなり真剣である。夫婦で釣りが出来るなんてうらやましい限りだ。

この旦那のほうが、後でわかったことだが、N君の釣友の座御君であった。
座御君はN君から私のHPのアドレスを聞き、掲示板に書き込みしてくれた。
このようにして、思わぬ所から、釣友の輪は広がっていく。嬉しいことである。

さて、この日の釣りであるが、相変わらず石鯛の子は多い、座御君は一度大きいのを掛けたが、バラしてしまった。それでも気合い十分である。新しく撒き餌を作り直し、真剣に穂先を見つめている。どうも、夕方まで粘るらしい。

5時半、刺し餌が残るようになり、ウキが鈍くシモっている。聞き合わせのつもりで、ゆっくり引いてみるとやたら重い。鋭くはないが重厚な走りである。

私はかまわずリールを巻く。大した手応えではない、そのうちに魚体が見えた。
なんと、でかいグレである。しかも、35cmと25cm位のを子分に引き連れている。この2尾のグレは、親分が釣られていることに、気がついていないようだ。
親分の方も、ハリに掛かっていることに気がついていたかどうか、怪しいものである。その後、いとも簡単に私の差し出すタモに収まってしまった。子分共は海中に消えた。

なんとまあ、でかいグレだ。こんなグレは今までに釣ったことはない。しかし、グレと言えばその遊泳力はチヌの比ではなく、私のヘラ竿改造では殆ど難しいはずなのに、やけに簡単に降参したものだ。やはり、自分が釣り上げられていることが、わからなかったんだろう。

座御君の携帯が鳴り、彼は「隣の人が50cm位のグレを釣った」と報告している。
私は苦笑しながらも、何事もなかったように釣り続けた。

6時に42cmチヌが来た。私が釣りたかったのはコレである。グレなどいくら大きくても外道にすぎない。

その後すぐ暗くなったので、座御君夫婦は名残惜しそうに帰っていった。

私はその後も電気ウキに交換してがんばり続け、6時半に36cmを釣った。
しかし、タモ入れするまで何の魚かわからないので夜は困る。事実その後も、ものすごい引きで、年なしかと期待したら、なんとボラだった。日が暮れてからボラを釣ったのははじめてである。
私の竿がひん曲がっているので、筏帰りの渡船がわざわざ、堤防まで見に来て、何の魚だと聞く。ボラだと答えると、安心したように港へ向かっていった。大方あまり良い釣果ではなかったのだろう。

チヌもボラも釣れなくなって、ゴンズイが入れ食いになってきたので、納竿した。
このあと、このゴンズイを我慢して、10時頃までがんばればまた、食うかも知れないがやめにした。ハリ外しの時、ヒゲにさわったらチクッとして痛かったからである。この魚の毒があるのは背鰭と胸鰭だけだと聞いていたが、ヒゲにも多少あるらしい。その後も少し痛んだが、家に着く頃にはもう気にならなくなっていた。

御座の堤防で食ったのはこの日が最後で、その後中北氏や、佐渡氏、それにN君の釣友らが゜釣行したが食いは止まってしまったようである。

新釣行記 11に続く

BACK